避妊用ピルと緊急避妊


 経口避妊薬、いわゆる「ピル」は1960年に米国の食品医薬品局(FDA)で認可されて以来、世界の女性に広く使われてきている避妊法です。世界でこれだけ使われているのに、日本でもピルを使ってよいと日本の厚生労働省が認可したのは、ほんの数年前です。しかも健康保険がきかないので、ピルを使う場合には、お薬を自費で購入しなければなりません。そんなこんなのせいで、日本ではピルがあまり普及していないようです。

そこで、ピルとはどういうものなのか、ご存じの方も多いと思いますが、ここでもう一度、勉強してみてはいかがでしょうか。

※ピルは性感染症(クラミジア、エイズ、淋菌感染症、性器ヘルペスなど)の予防には効果がありませんので、ご注意ください。

ピルとは?ピルを飲むと避妊できるの?

 ピルは避妊を目的とした飲み薬(錠剤)で、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンが含まれています。これらのホルモンは、私たち女性の体の中でつくられる女性ホルモンと同じ種類のものです。これらのホルモンの働きのおかげで、ピルは以下のようにして避妊効果を現します。

  1. 1.排卵が起こらないようにします。
  2. 2.子宮頚管粘液の性状を変え、子宮の入り口にちょうどフタをするような形で、精子の侵入を防ぎます。
  3. 3.受精卵が子宮内膜に着床しにくくなります。

ピルの避妊効果はどの程度あるの?

 避妊の方法はいろいろとありますが、現在、日本で一番多く用いられている方法はコンドームです。
20歳から50歳までの既婚女性を対象とした調査(1997年)では、避妊方法については、コンドームが75.5%と圧倒的に多いという結果が得られています。

はたして、各種の避妊法を用いた際の妊娠率、つまり避妊法の失敗率はどのくらいなのでしょうか?
1998年に米国で発表されたデータ(以下の表)がありますので、みて下さい。

各種避妊法使用開始1年間の失敗率(妊娠率)

方法 理想的な使用*(%) 一般的な使用**(%)
ピル(卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤) 0.3 9
コンドーム 3 18
リズム法 0.4~5 24
ペッサリー 6 16
殺精子剤のみ(発砲錠、ゼリー、クリーム) 6 26
女性避妊手術 0.5 0.5
男性避妊手術 0.1 0.15
避妊せず 85 85
*:選んだ避妊法を正しく続けているにもかかわらず、妊娠してしまった場合
**:選んだ避妊法を使用しているにもかかわらず、妊娠してしまった場合(ピルについては、飲み忘れを含めた場合の失敗率)

ピルを飲み忘れなく、正しく飲んでいれば、妊娠する確率は0.1%(1,000人の女性が1年間飲み続けた場合、1人が妊娠する)以下です。ただし、ピルを飲み忘れるなどした場合には妊娠する確率は5%に上がります。飲み忘れた錠剤の数が増えるほど、妊娠する確率も増えるようです。

ピルの組成と飲み方

 ピルは毎日同じくらいの時間に、1錠ずつ、21日間連続して飲みます。21日間連続して飲んだ後は、7日間ピルを飲むのをやめます(あるいは、女性ホルモンの入っていない錠剤(プラセボ)を飲みます。この期間を「休薬期間」と言います。
そして、休薬期間が終わったら、たま次のお薬を飲み始めます。前に示したように、正しく飲んでさえいれば、きちんととした避妊効果が得られます。

 一般的に避妊用ピルといわれているのは、女性ホルモンの含まれる量が少ない「低用量ピル」のことをいいます。以前は、女性用ホルモンの含有量が多い「中用量ピル」というのが使われていたのですが、女性ホルモンによる副作用を減らすために現在のような低用量ピルが開発され、使われるようになりました。

 ピルに含まる2種類の女性ホルモンの配合量によって、1相性、3相性のピルがあります。1相性ピルは、女性ホルモンの分泌パターンに関係なく1周期(21錠)中に含まれる卵胞ホルモンと黄体ホルモンの量が全て一定で、3相性ピルに比べて総ホルモン量はやや多くなっています。
一方、3相性ピルでは、1相性ピルの不正出血が多い時期だけ増量した中間増量型と、より細かく女性ホルモンの分泌パターンにあわせて女性ホルモンの含有量を設計した漸増型があります。

ピルの良い点と悪い点

授避妊効果のほかにも、ピルには以下のような良い点(副作用)があるとされています。

  1. 1.卵巣がんの発生の減少
    卵巣がんの原因として、排卵との関係性が疑われています。排卵するたびに卵巣上皮は破裂、分裂を繰り返しますが、その過程から細胞異常が起こり、細胞が異常増殖し、腫瘍化すると考えられています。ピルを服用することで、排卵回数を抑えることができるので、がんの発生は減少すると考えられています。
  2. 2.子宮体がんの発生の減少
    子宮がんを抑えるメカニズムは未だ不明ですが、現在までに報告された疫学調査の結果から、ピルを飲むことで子宮がんのリスクを減らすことが示されています。
  3. 3.月経に関連した副作用
    ・月経異常の減少
    ・鉄欠乏性貧血の減少
    ・月経困難症の減少

     ピルを正しく服用することで月経の周期が規則的になるので、月経不順の人でも正常周期となります。ピルを飲むことによって、飲まない時に比べて、子宮内膜症の腺上皮の増殖が抑えられるため、月経時、内膜が剥がれるときに失われる血液の量が減ります。その結果として鉄欠乏性貧血の予防が期待されます。
    また、ピルを飲むことで月経困難症の症状が軽くなるのは、ピルにより排卵が抑制され子宮内膜の増殖が妨げられることによると考えられています。

  4. 4.排卵抑制に関連する副作用
    ・卵巣のう腫の減少
    ・子宮外妊娠の減少
    ピルの排卵抑制作用により、他の避妊法を用いた際に生じる子宮外妊娠が減少すると報告されています。
  5. 5.骨盤内感染症の発生の減少
    ピルを服用することで、子宮の頸管粘液の粘度が高まり、膣内最近が子宮内へ移行するのを防ぎます。

また、ピルの悪い点(副作用)は以下のとおりです。

  1. 1.不正出血、吐き気、頭痛、乳房の張りなどの症状
    ピルの服用を開始してから最初の数ヵ月、不正出血、吐き気、頭痛、乳房の張りなどが起きることがあります。しかしこれらの症状は、ピルに含まれる女性ホルモン剤に体が慣れていくにしたがって通常はおさまってきます。
  2. 2.注意すべき重大な副作用
    ○血栓症
     血管の中で血液が固まってしまうことを「血栓症」といいます。血栓(血のかたまり)は血管内の血液の流れを悪くし、場合によっては、はがれた血栓が血管を塞いでしまう(血栓塞栓症)があります。血栓が肺動脈に詰まると肺血栓塞栓症が生じ、呼吸困難や胸痛、そして心肺停止にまで至ってしまう恐れがあります。「エコノミー症候群」も肺血栓塞栓症です。女性ホルモンを含有するピルを飲むことで、ピルを飲まない人に比べ血栓症のリスクが高まります。およそ2~4倍高くなるといわれています。

    血栓症になると以下のような症状が現れます。何かありましたら、すぐに病院にお問い合わせください。
     ・ふくらはぎの痛み、しびれ、手足のしびれ
     ・鋭い胸の痛み、突然の息切れ、胸部の押しつぶされるような痛み
     ・激しい頭痛、めまい、失神、視覚・言語障害(目のかすみ、舌のもつれ)

    ○心臓発作などの心血管系の重篤な副作用
    ピルを服用することで、飲まない場合に比べて心臓発作などのリスクが高まります。
    特に、35歳よりも年齢が高いことや、喫煙者であることなどは、これらのリスクを高めます。

ピルを飲むにあたって注意してほしいこと:避妊効果を低下させるような要因

  1. 1.激しい下痢または嘔吐が続くとき
    ピルに含まれる女性ホルモンが吸収されにくくなり、妊娠する可能性が高くなります。
  2. 2.ピルの効果を下げるような「薬」を合わせて飲んでいるとき
    病院で処方される薬のなかには、ピルの効果を下げてしまうものがあります。たとえば、風邪をひいたり、歯の治療を受けたりした後に抗生物質を処方されることがあるかと思いますが、この抗生物質のなかでも「ペニシリン系」と「テトラサイクリン系」のものは、ピルの効果を下げてしまいます。

    病院にかかるときは、必ずピルを飲んでいることを伝えるようにしてください。

  3. 3.ピルの効果を下げるような「サプリメント」を合わせて飲んでいるとき
    セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含有するサプリメントは、ピルの効果を下げてしまいます。サプリメントを買うときは、含まれている成分を確認し、注意してください。

緊急避妊用ピルについても知っておいてください

 緊急避妊用ピル(モーニングアフター・ピルとも呼ばれています)は、避妊をしないでセックスをしてしまったとか、コンドームが破けるなど避妊を失敗した場合に飲む薬で、妊娠を阻止します。

通常は、上記のような無防備なセックスをしてから72時間以内に緊急避妊ピルを2錠飲みます。

緊急避妊ピルがどのように避妊効果を現すかは、月経周期のどの時点で薬を飲んだかによりますが、作用機序として、排卵を抑える、受精を妨げる、子宮内膜の状態を変えることで受精卵の着床を妨げることなどが考えられます。

※ただし、緊急避妊ピルを正しく服用しても避妊の効果が得られず、妊娠してしまうことがあります。
(あくまで緊急時のための方法です。あらかじめご了承ください)

人工妊娠中絶について

最後に、人工妊娠中絶のことにも簡単にふれておきます。

中絶の件数は、昭和30年(約117万件)と比べて、平成9年(33万件)では約3分の1に減少しています。その理由として、避妊についての知識や避妊方法が普及してきているためだと考えられています。

一方で、20歳未満の人工妊娠中絶は増える傾向にあります。これは、適切な避妊方法の知識が普及していないことなどが原因と考えられてます。

●参考文献

  • JFPA Hompage(社団法人 家族計画協会)
  • 経口避妊薬(OC)の有効性についてのとりまとめ(厚生労働省)
  • ピルとの付き合い方
  • NOT-2-LATE.com(The Emergency Contraception Website)

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