授乳中に薬を使うということ
母乳栄養は、乳児死亡率を軽減させ、乳児の感染症や免疫系の病気も減少させるといわれています。
特に問題がなければ、最初の12ヵ月は母乳栄養を行うべきという考え方もあります。けれども授乳期間中に風邪をひいたり、歯の治療をしたり、何か病気になり薬を使うことになると、薬が母乳中に出て、赤ちゃんに何か悪い影響を与えるのではないかと心配される方が多いかと思います。
薬を服用するのが数日であったり、必要な時だけお薬を使ったりした場合、母乳中に移行する薬の量は極めてわずかなので、特に神経質になる必要はないでしょう。ただし、薬を処方してもらう際には、医師や薬剤師に授乳中であることを伝え、そのうえで薬を心配せずしっかり服用するようにしてください。
母乳育児をするには、まず、健康の回復が必要です。
母親は、大脳から分泌されるプロラクチンというホルモンにより分泌が促進されます。
分娩直後から数日間はプロラクチンの分泌が非常に活発になり、おっぱいが急激にはってきますが、その後、プロラクチンの分泌は徐々に減り、妊娠前の正常な値に近づいていきます。しかし、プロラクチンの値が正常に近づいたとしても、赤ちゃんにおっぱいを吸われることが刺激となって、吸われるたびプロラクチンが分泌されます。つまり、吸われることで母乳の分泌は促進され、乳汁分泌機能が維持されるのです。
母乳は赤ちゃんの体の中の代謝能力に合わせ、初めのうちは薄いのが特徴です。母乳の成分は90%が水分で、残りの10%は脂肪、糖分、たんぱく質などで構成されています。母乳を構成するこれらの成分は血液から供給されるので、母親の生理状態、食事内容に影響を受けます。また、赤ちゃんの成長によっても母乳の成分は変化します。初乳(分娩から5日目ぐらいまで)では、たんぱく質や無機質が多く、脂肪と乳糖の含有が少ないのが特徴です。その後、徐々に成乳の組成へと変化し、2ヶ月ごろには一定の値となり、以後、12ヶ月ごろまでは大きな変化はみられません。
母乳の状態が分娩直後と数日後では変化するため、薬の母乳への移行量も変わってきます。さらに母乳への薬の移行性は薬の科学的な性質も大きく影響します。薬の分子量(大きさ)や、水溶性(水に溶けやすいもの)か、脂溶性(脂肪に溶けやすいもの)かによっても母乳中へ薬がどのくらい移行するかが予測できます。
新しい薬などは母乳への移行性と赤ちゃんへの影響についての臨床データが得られていないものが多いので、できれば避けた方がよいでしょう。また、新生児は薬を代謝する能力が低いため、新生児の体内に蓄積する危険性のある薬もあります。
過去からの臨床データにより、授乳中に服用しても問題ない薬があります。これらの薬は、母乳に移行するとしても微量であったり、たとえ母乳人移行しても赤ちゃんに影響を及ぼすことはないと考えられています。
授乳中であることと、赤ちゃんの月齢を必ずお伝えください。そうすれば、医師は授乳中でも服用できるような薬を処方してくれます。
授乳中であることと、赤ちゃんの月齢を必ずお伝えください。そうすれば、医師は授乳中でも服用できるような薬を処方してくれます。
妊娠中と同様にニコチン(喫煙)、アルコールの摂取(飲酒)はすべきでないとかんがえられています。
特に喫煙は、間接的に煙を吸い込むだけでも害があるとの報告がありますので、母親の健康だけでなくご家族の健康も考慮し、禁煙することをお勧めします。